2005/7/21 掲載
 ファイナンシャルプランナー(FP)の大内です。
 3回目のテーマは「60歳〜65歳の間の働き方のちがいによる社会保険の考え方」としていましたが、これは60歳以降の雇用延長問題と大きな関係がありますので、その点を中心にして考えていきたいと思います。

大内:
前回は「サラリーマンであった人が父親の事業の一部を引継ぐ場合の手法の一例」を話しましたが、一般のサラリーマンの方には特殊事情と受け取られた方が多いようです。
前回の事例の趣旨はサラリーマンの方も主体的にご自分の生き方を考えていきましょう!ということにあります。
来年4月から施行される高齢者雇用安定法の改正により、希望者は誰でも定年延長できるというあやまった解釈が広まっていますが、それはまちがいです。
このことを西田さんから説明いただきたいと思います。
次に、実際に働き方を選択する場合、受給する厚生年金や今までの健康保険加入がどう変わるか、その場合の選択肢にどのようなものがあるかを考えてみたいと思います。

西田:

今回の高齢者雇用安定法の改正は、希望者が誰でも雇用の延長を受けられるものではありません。
改正高年齢者雇用安定法により、65歳未満の定年の定めをしている事業主は平成18年4月1日より
  @定年制の廃止
  A定年年齢の引上げ
  B継続雇用制度の導入
これらいずれかの方法により65歳までの段階的雇用の確保が義務づけられることになりました。

@・Aであれば定年延長に関する問題はないでしょうが、Bの継続雇用制度の場合、原則「希望者全員を定年後も引き続き雇用する制度」でありながら、今回の改正では継続雇用する対象者を労使協定による「基準」で定めることができるようになります。
さらに労使協定が合意に至らない場合には、平成18年4月1日から3年間(中小企業は5年間)は就業規則に「基準」を定めることでもよいとされました。就業規則は労働者代表の意見を添付するだけで労使の合意は必要ありません。

今回の改正により人件費等の負担を強いられる企業にとっては、雇用の延長対象者の選別も可能なBの制度を選択する可能性が多くなることが考えられます。

それでは、継続雇用制度の対象者となる高齢者の「基準」としてはどのようなことが考えられるでしょうか。
厚生労働省が望ましいとする基準としては、
・意欲・能力等をできる限り具体的に測るものであること。
・必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること。

具体例としては


 ・社内技能検定レベルAレベル
 ・全国の営業所を3箇所以上経験者
 ・過去3年間の勤務評定がC(平均)以上の者

など労使で十分に協議のうえ基準の策定をするように述べています。

また今後の働き方の選択肢として活用されるであろう、子会社やグループ会社への転籍あるいは子会社での派遣労働なども、定年まで働いていた企業とこれらの企業に緊密性があり継続雇用を行う明確性があれば継続雇用制度の導入に含まれると解釈されています。


大内:
お話のように、嘱託制度や人材派遣会社の設立による雇用など雇用延長のための制度は一定の資格者を対象としています。
対象者に該当するためには、それ相当の能力を有する人になる必要があります。
次に、働き方に関してですが、働き方といっても年齢的に60歳過ぎてから雇われる場合に、フルタイムで働きたい方やパートタイムで働きたい方、職種は何でもいいから働きたい方や自分の培ってきた能力を活かしたい方など、ご希望があると思います。
また、御自分あるいは仲間と共同で事業を起こす、事業を起こすほどではないが仕事を受託してやりたい、という方もおられると思います。
これらの形態ごとに社会保険の適用が異なりますが、いかがでしょうか?

西田:

働き方の違いは、社会保険(厚生年金・健康保険)や労働保険(雇用保険)の対象になるかどうかといった重要な点との関わりに注意が必要です。

社会保険の被保険者になるのは「1日または1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数がそれぞれ当該事業所において従事する一般従業員のおおむね3/4以上」とされています。
厚生年金に加入することになれば、その間給付される老齢厚生年金は在職老齢年金として賃金の額によって一定の年金が支給調整されます。
「・・・3/4未満」で勤務していたり個人で事業を起こされた方など厚生年金に加入していなければ年金を調整なしでもらうことができます。
「・・・3/4未満」のまま1週間の労働時間を20時間以上にして勤務すれば、雇用保険の被保険者になりますので60歳以降の雇用継続の結果賃金が下がった場合の給付金も受取れる場合が出てきます。
フルタイムで引続き勤務するだけでなく賃金+年金(調整なし)+雇用継続給付(調整なし)という短時間での働き方もライフスタイルの中に取り入れる余地があるでしょう。

また社会保険の被保険者にならないと、厚生年金の第3号被保険者である配偶者が60歳未満であった場合には国民年金の保険料負担が新たに発生しますし、健康保険に代わり
 ・健康保険の任意継続被保険者制度
 ・国民健康保険(退職者医療制度を含む)に加入
 ・特例退職被保険者になる(会社が特定健康保険組合であった場合)
などが考えられますが、それぞれ加入条件や負担保険料が違います。
どの制度を選択するべきかをよく検討すべきでしょう。

留意しておきたいこととしては、社会保険も労働保険も被保険者となる要件が常に見直されていることです。
次回年金法改正時(平成21年)には要注意です。


大内:
働き方により厚生年金の受給額や健康保険料の支払い額など異なりますね。定年がまじかな方や定年が視野に入ってきた方々などは、定年以後の働き方と暮らし方を実際的数字でとらえてどのようなライフスタイルを組み立てるかということを行ってみることがよいですね。

ご相談があれば私と西田さんでお答えして参りますのでお気軽にご質問下さい。
 

このシリーズは今後も継続いたします。次回号は「FPが語る離婚と年金」についてご紹介する予定です。

●この連載シリーズに関してのご質問・お問い合わせは下記までお願い致します。
 株式会社 グローバルハート
 TEL:03-3524-1468 FAX:03-3524-1564 E-mail:gheart@fine.ocn.ne.jp

●グローバルハート登録アドバイザーについて
 グローバルハートには、FP(ファイナンシャルプランナー)、社会保険労務士、税理士等の資格を備えたアドバイザーが全国で約300名登録しており、企業年金制度改革や教育(年金教育・投資教育)活動を行っております。

 
<< 前回の記事を読む  次号の記事を読む >>