2005/10/20 掲載
 FPの大内です。知って得する生活情報ということで、今回は平成17年度の年金制度改正により創設された新しい制度である「国民年金の若年者納付猶予制度」について、社労士の西田さんにお聞きします。

大内:
今年創設された「国民年金の若年者納付猶予制度」ですが、簡単に言うと『20歳代の方で、所得が一定水準より低く国民年金保険料を収めることが困難な方は、申請すると保険料納付を猶予しますので、所得が増えましたら保険料を納めてください』ということらしいのですが、詳しい内容を知る方がほとんどいないと言うのが現状でしょう。
社会保険庁のホームページの記載を読んでも、すんなりと理解できません。
そこで、以下の項目を分けて、社労士の西田さんにご説明いただきます。
1)対象者
2)所得基準
3)申請のしかた
4)期間
5)納付猶予された保険料を追納する場合

西田:
1)の対象者ですが、厚生年金とか公務員・私学教職員共済年金に入っていない、つまり国民年金加入義務者の20歳から29歳までの方々が対象です。

大内:
そうしますと、企業や役所・学校などに勤めている方はそれぞれ厚生年金・共済年金に加入していますから、そのような働き方をしていない若い人たちが対象ということになりますね。

西田:
まぁ簡単にいえば、そのように考えてもよろしいでしょう。
そもそも、この制度がつくられた理由は、就職していない20歳台の若年者の場合、親と同居して生活していることが多く、この場合、本人に所得がなくても親に所得があるということで年金保険料の免除対象者になることができませんでした。しかしこれでは若年者が実際に年金保険料を負担できるようになっても過去の未加入期間があることで、ますます国の年金制度に関心をなくしてしまい、将来、無年金者、低年金者となることを防止するため、この期間の支払を猶予し将来追納できる仕組みを用意したものです。
ただしこれは10年間の時限措置とされており、恒久的な制度ではありません。

大内:
「若年者納付猶予制度」の対象となる所得基準はどの程度ですか?

西田:
2)の所得基準ですが、平成17年度の所得基準は
『57万円+(控除対象配偶者+扶養親族数)×35万円』となっています。

大内:
この基準で、控除対象配偶者となっているのは、もし結婚していて配偶者が働いている場合はそれも合算されるということでしょうか。

西田:
そのとおりです。

大内:
なるほど!でも夫婦で働いていて、この基準ですとかなり低い所得となりますね。

西田:
国民年金には、一定基準以下の所得者は申請すれば保険料の「全額免除」や「半額免除」を受けられるという保険料免除制度があります。しかし、親御さんと同居している場合、ご本人の所得が低くてこれらの対象となり得ても、世帯主である親御さんの所得により、この制度の承認がおりない場合がありました。
今後はこの若年者納付猶予制度の承認を申請すれば、世帯主の所得に関係なく承認されます。

大内:
なるほど、「学生の納付特例」とは似て非なるものなのですね。

西田:
そうです!ですから学生の方々が在籍中に申請すれば承認される「学生の納付特例」とは所得基準等が異なります。また、独立して生活している方々を対象とした先ほどの「全額免除」の所得基準とも異なります。
ここで注意して頂きたいこととして「全額免除」の場合は、仮に免除された期間の年金保険料を後から納めなくても、将来受け取る年金額として本来納付した場合の額の3分の1は受け取ることができるのに対し、「学生の納付特例」も「若年者納付猶予」も年金保険料を後から納付しなければ、将来受け取る年金額には一切反映されないという点です。
あくまでも「20歳台に支払う年金保険料は猶予するものの、その後必ずその分の年金保険料は納めて下さいよ。」という考えに立っています。

大内:
老後受け取る年金のことはわかりましたが、障害や遺族の部分はどうなりますか?

西田:
障害年金や遺族年金は免除期間中であっても支給されます。
未加入のままでは、これらの年金を受け取る権利はありませんので免除者の申請をし、承認を受けておく必要がありますね。

大内:
少し頭の中が整理されました。
・独立して生活している人達を対象とした「申請免除」。
・学生を対象とした「納付特例」。
・親と同居している20歳代の人達を対象とした「若年者納付猶予」。
の3本立てになったということですね。

西田:
3)の申請のしかたについてですが、住民登録している市区町村の国民年金担当窓口に行って、申請していただくことになりますが、これは承認を受けようとする間は毎年申請する必要があります。
4)の期間については、「申請免除」、「学生の納付特例」、「若年者納付猶予」も共に、10年以内に遡って保険料を納めることが出来ます。
因みに、「申請免除」と「学生の納付特例」の追納金額は別表の通りです。

大内:
そうしますと、20歳から25歳まで猶予の適用を受け、その後は保険料を納めていたが、猶予された期間の保険料を32歳から払おうとしますと、20・21歳の時の2年間は遡って払うことが出来ない未納期間になり、22歳から25歳までの3年間分は払うことができるということですか?

西田:
そのとおりです。
5)の追納保険料ですが、承認を受けた時の保険納付月額を13,300円としますと、22歳時の分として納める金額は16,310円、23歳時の分は16,260円になり、24歳時の分は16,040円になるように、承認を受けた時の保険料に経過期間に応じ、加算額が上乗せされます。

大内:
そうしますと、(16,310−13,300)×12ヶ月=36,120円多く払う事になり、9年目の分は35,520円多く払うことになりますね。

西田:
国民年金保険料は2005度から毎年280円ずつ上がっていき、2017年に16,900円で固定されることになっており、今から10年後の保険料は月額16,100円になりますので、そこから払うとしますとそれほど高い加算額ではないでしょう。

大内:
そうですね。
この制度の所得基準に該当する人は民間保険の保険料負担も大変でしょうから保障対策もなおざりだと思います。この制度を申請しないまま障害者になった場合の親御さんの苦労や、もしお子さんがいてまだ小さい時に死亡した場合の残された家族の負担を考えますと、この制度を利用することを勧めたくなりました。
本日はどうもありがとうございました。
 
ご相談があればFP 大内と社労士 西田でお答えして参りますのでお気軽にご質問下さい。
 

このシリーズは今後も継続いたします。次回号は「高齢者の雇用延長義務に伴う知っておきたい周辺情報〔Part.2〕」についてご紹介する予定です。

●この連載シリーズに関してのご質問・お問い合わせは下記までお願い致します。
 株式会社 グローバルハート
 TEL:03-3524-1468 FAX:03-3524-1564 E-mail:gheart@fine.ocn.ne.jp

●グローバルハート登録アドバイザーについて
 グローバルハートには、FP(ファイナンシャルプランナー)、社会保険労務士、税理士等の資格を備えたアドバイザーが全国で約300名登録しており、企業年金制度改革や教育(年金教育・投資教育)活動を行っております。

 
<< 前回の記事を読む  次号の記事を読む >>