2005/11/17 掲載
 社労士の西田です。知って得する生活情報ということで、今回はこのシリーズの1回目に取り上げた在職老齢年金制度について、別の面からお話していこうと考えています。

大内:
このシリーズも7回目となりました。
1回目から半年が過ぎ、これまでにご紹介した題材の中で特に皆様方からお問合せが多かったテーマについて、もう少し掘り下げてお話をしていきたいと思います。
今回は高齢者の雇用延長に対応する際に重要である「在職老齢年金制度」について前回触れていなかった点を社労士の西田さんから解説していただきます。

西田:
では「在職老齢年金」について復習してみましょう。
この制度は年金を受給している者が在職して厚生年金の被保険者となっている場合に、その者の賃金の額によって本来支給されるはずの年金額が支給調整される仕組みのことです。
在職老齢年金の支給停止額の計算方法は、このシリーズの1回目で以前お話しましたので、ここでは「年間の賃金の額が同じであっても、受取る年金の額に違いがでてしまう」というケースについて考えてみます。

それでは大内さん。在職老齢年金の額を計算する際に重要な要因が2つありますが、それはなんでしょうか。

大内:
年金月額(基本月額)と総報酬月額相当額ですね。「総報酬月額相当額」という用語がいかにも専門用語のようにとっつきにくく、なかなか理解されにくいようです。

西田:
実はこの「総報酬月額相当額」が今回のキーワードなんです。
総報酬月額相当額とは「その月の標準報酬月額」+「その月以前1年間の標準賞与額合計×1/12」のことです。
簡単に言えば、在職老齢年金の対象となる月の給料分を@とします。
@の月から過去1年間に支払われたボーナスの合計額を12で割って月額分にみなした額をAとし、@とAを合わせた額のことと考えればいかがでしょうか。
 

大内:
在職中に支払っている厚生年金の保険料も確か今は年収を基礎としていますよね。受取る年金に影響する収入も年収額で考えようということでしょうか。

西田:
ところが先ほどの@とAはひとつの計算式になっていながら、算定される時期が大きくちがうことが問題なのです。
例えば60歳で定年となって嘱託により再雇用されたケースなどでは、一般的に定年前と比べて毎月の賃金は大きく低下するものと考えられます。
この際に支給される在職老齢年金の支給停止額に反映する毎月の賃金は、低下した現在の賃金となりますが、賞与部分は過去1年前のものです。
したがって定年前の高い賞与額が年金額を調整するための算定対象となってしまい、定年前に高額の賞与を受取っていた場合には、定年後最長で1年間は年金額が著しく低くなってしまいます。

大内:
具体的にはどれだけ影響を受けるものなのですか。

西田:
それでは事例を挙げて考えてみましょう。
【ケーススタディ】
会社員のAさんとBさんはともに現在59歳です。
2人とも60歳から老齢厚生年金を請求する予定ですが、63歳までは報酬比例部分のみ支給されることになっています。(年金月額10万円の見込み)

60歳直後の3月末で定年を迎えることになっている2人の定年前の年収は、ともに600万円です。
賃金の支払い方法は次の通りです。
定年後は嘱託再雇用されることとなり、「賃金20万円(標準報酬月額)・賞与なし」で働き続けた場合、
定年直後の4月にそれぞれが受取る年金(在職老齢年金)はどうなるでしょうか。

*老齢厚生年金以外に支給される給付金等はここではないとします。
【Aさん・Bさんの在職老齢年金(月額)】

大内:
本来の年金額は10万円でしたから、5万円の支給額の差は非常に大きいですね。
このケースではいつまで支給額の差が解消されないのでしょうか。

西田:
翌月の5月までは同じですね。6月からは過去1年の中に前年夏の賞与額分が含まれなくなりますが、冬の賞与額はまだ含まれてしまいます。
上記の計算式にあてはめますと6月のAさんの在職老齢年金
10万円−3万5千円=6万5千円
となりこの額が11月まで続きます。


大内:
今回のケースで退職前の賞与の額が年金額に大きく反映することがわかりました。定年後1年程度の経済面対策は早めに自分で準備することをアドバイスするべきですね。

西田:
これらのことを会社側から見た場合、高齢者の雇用延長義務を進めるためのヒントが隠れているように思えます。
雇用延長のための対応策には時に労使の合意が必要な場合がでてきます。
定年間近い社員の賃金制度の変更などもスムーズに移行できる一例ではないでしょうか。
 
ご相談があればFP 大内と社労士 西田でお答えして参りますのでお気軽にご質問下さい。
 

このシリーズは今後も継続いたします。次回号は「定年後の金融資産運用」についてご紹介する予定です。

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