2006/3/16 掲載
 社労士の西田です。「高齢者の雇用延長義務に伴う知っておきたい周辺情報」のシリーズも4回目となりました。
 この話題のきっかけとなった改正高年齢者等雇用安定法もこの4月1日より施行となりますので、今回でこのテーマも一応の区切りとするつもりです。
 今後企業は高齢者に対してどのように対応していけばよいのかといったことも含めて、大内さんと語り合っていきたいと思います。

西田:
高齢者の雇用延長確保を実施しなければならない企業側からすれば、賃金の見直し(減額)については避けて通れないのが現実のようです。

大内:
そのようですね。そこで在職老齢年金などを活用して、これからの賃金にどれだけの年金という収入をプラスすることができるのかを話してきました。

西田:

今回は年金とともに知っておきたいもう一つの公的給付金をご紹介します。
雇用保険から支給される「高年齢雇用継続給付」です。

高年齢雇用継続給付について

60歳以降の毎月の賃金が、 60歳到達時に比べて一定率以上低下した場合に支給されます。
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類があります。

@60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者で、被保険者期間が通算して5年以上あること。

A60歳到達時の賃金(60歳以前6ヶ月の月例賃金の平均額)に比べて75%未満の賃金で雇用されていること。

【高年齢雇用継続基本給付金】
60歳到達後も同じ事業主に引き続き雇用され、賃金が60歳到達時に比べて75%未満に低下した場合に一定額が支給される。

【高年齢再就職給付金】
失業給付(基本手当て)の支給残日数を100日以上残し、60歳到達時とは別の事業主に雇用され、賃金が60歳到達時に比べて75%未満に低下した場合に一定額が支給される。

*これまでのテーマが雇用延長問題でしたので、この場では高年齢雇用継続基本給付金を中心に考えていきたいと思います。


大内:
60歳以後の賃金がそれまでと比べて大きく減ってしまった場合に、雇用保険から給付金が支給される制度ということですね。
それではいくらぐらいの給付金が得られるのですか。

西田:
給付金の支給額は下記の通りです。

◆高年齢雇用継続給付金の支給額

●対象月の賃金*1が60歳到達時賃金*2の61%未満のとき

支給額=賃金×15%

●対象月の賃金*1が60歳到達時賃金*2の61%以上75%未満のとき

支給額=賃金の逓増により給付額は、賃金×15%より逓減

*1:平成17年度は339,484円が限度、*2:平成17年度は452,100円が限度)

*高年齢雇用継続給付金額の最大になる目安は、60歳以後の賃金が60歳到達時賃金の6割程度になった場合といえますが、この際の60歳到達時賃金は最大でも45万円程度が限度です。60歳前の賃金が高額の場合には結果として6割を下回る賃金となることが必要です。

【具体例】
60歳到達時賃金が40万円であって、その後の賃金が24万円(60%支給)になってしまった人の場合であれば 24万円×15%=36,000円が給付されます。


大内:
在職老齢年金を受給すると、この給付金はどうなりますか。

西田:
もちろん在職老齢年金とこの高年齢雇用継続基本給付金は併給することができます。賃金の減額分を両者で補完できるようにすればよいでしょう。
ただしその場合には在職老齢年金との併給調整ということがされますので、賃金再設計をする際の実収入計算に注意をして下さい。

【在職老齢年金との併給調整】

高年齢雇用継続給付を受給している者が同時に在職老齢年金も受給すると、併給調整により在職老齢年金が支給調整されます。

標準報酬月額が60歳到達時賃金の61%未満のとき…

標準報酬月額×6%が支給調整*3

*3:年金の支給が一部カットされること

標準報酬月額が60歳到達時賃金の61%以上75%未満のとき…

標準報酬月額×調整率*4が支給調整*3

*4:「調整率」については各社会保険事務局にお問合せ下さい。

標準報酬月額は厚生年金などの社会保険で使われる「仮の月例賃金額」ですがわかりやすくするために高年齢雇用継続給付金を考える際の賃金額と同じだったとすると、先ほどの【具体例】での40万円の賃金が24万円に減額された人の場合、在職老齢年金も受給できていれば、この人の受給できる本来の在職老齢年金月額からさらに24万円×6%=14,400円が支給カットされます。


大内:
老齢厚生年金は「在職」により支給額を減らされたうえに、雇用継続給付金の支給を受けるとさらに減額されてしまうのですね。

西田:
確かに両者の支給内容は、受給者の賃金額に対して強く反応する仕組みとなっています。これまでも話してきたとおり在職老齢年金や高年齢雇用継続給付金は、60歳以後の賃金の減額を補うためには重要な公的給付金といえることができます。
しかしそれを別の面から見れば、60歳以後の賃金をある程度「著しく・・・」減額しなければ、公的給付金の支給を十分には受けることができないともいえるわけです。

大内:
こうした賃金の制約が高齢者の引き続き働こうとする「やる気」をそいでしまわないよう、雇用する企業としても何らかの処遇を考えなければなりませんね。

西田:
企業としても高齢者のための何らかの働き甲斐のある制度を作ることで、その効果が企業の利益につながるなどメリットのあることだと思います。
しかしながら、一生懸命働いてくれた高齢者に賃金アップで報いてあげようとすれば、それは年金や高年齢雇用継続給付金の支給停止につながります。
賞与に反映しようとしても、年金は総報酬額つまりは年収ベースで支給額を調整する仕組みに変わりましたので、うまくいきません。
賃金が増えることは社会保険料の負担額や課税額増加につながり、一方では公的給付金が減ってしまうことと合わせて考えた場合、ケースによってはかえって手取り収入の減収になってしまうこともあるのです。

大内:
他の高齢者より成果をあげた人に対して差をつけてあげようとしたことが反対の結果を生み出してしまうのでは、企業としてもとても悩ましいことですね。

西田:
そこで私からの提案として、60歳以後の雇用延長期間に限った退職金制度を検討されてみてはどうかと考えています。現行の退職金制度は60歳までとし、それ以降は別建ての退職金制度を用意します。雇用延長期間の毎月の賃金に差をつけられなくてもその間の企業への貢献度をポイント制のような形で評価し、雇用終了時に退職金として支給すれば高齢者の働く姿勢に大変効果があると思います。
退職金なら社会保険料負担もなく、公的給付金の支給にも影響を与えません。

大内:
雇用延長が終了する時期は「老後の暮らし」も始まるので、この退職金を得ることの意義は大きいですね。自分の力で退職金を増やすこともできるとすれば、仕事に対するモチベーションもぐんと上がることでしょう。

西田:
退職金制度をうまく利用すれば働き手のやる気を促し、それにより企業も発展できる。このことは高齢者に限ったことではなく、働き盛りの従業員についてもあてはめることができるのではないでしょうか。これからの退職金制度全般の運用についてもいずれ解説を加えていければと思っています。
企業年金や退職金をテーマにした情報は今後もこのメルマガ誌上で順次提供されますので、是非ご期待をして下さい。
 
ご相談があればFP 大内と社労士 西田でお答えして参りますのでお気軽にご質問下さい。
 

次回号は「定年後の金融資産運用〔Part.3〕」についてご紹介する予定です。
このシリーズは来月号で終了となります。
第17号からの新シリーズをただ今検討しております。

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