2006/4/20 掲載
 前回号では「中小企業会計導入と退職給付制度」についての基礎、つまり「決算書の見方・考え方」のポイントを解説致しました。今までの中小企業の決算書は、税務申告のために作成されており、「中小企業会計」が導入となって初めて、株主や取引先等への会計基準に基づいた決算書を作成する必要に迫られています。
 今回は「退職給付引当金」を解説しながら「退職給付債務の考え方」、「原則法」と「簡便法」についてお伝えしてまいります。
 解説は前回号に引き続きグローバルハートが2005年9月に開催いたしました「中小企業会計と退職給付引当金セミナー」の資料を使用し解説させていただきます。
T.中小企業会計の全体像と退職給付引当金 (2)退職給付引当金
(2)退職給付引当金
1.<原則法>
A:退職給付
  債務
(PBO:
Projected
Benefit
Obligation)
一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に従業員に支給される給付のうち期末までに発生していると認められるものをいい、割引計算により測定される。
【退職給付】
一定の期間にわたり労働を提供したこと等に基づいて退職後に支給される給付(退職一時金、退職年金等)

 【イメージ図】
 勤続25年の従業員が勤続40年で退職するときの退職給付債務(脱退率等を考慮しない場合)
B:退職給付
  引当金



■引当金
 計上が
 必要


















■激変緩和
 措置
退職給付債務から年金資産の公正な評価額(=時価)を差引いた額。
【適格退職年金】
2012年をもって終了する。

確定給付型の退職給付制度(退職一時金・厚生年金基金・適格退職年金・確定給付企業年金)を採用している会社では、退職給付債務にまだ費用等に計上していない未認識の過去勤務債務数理計算上の差異を加減した額から年金資産を控除した額を「退職給付引当金」として負債に計上する。

【過去勤務債務】(PSL:Past Service Liability)
 退職給付の給付水準の改定等により発生した退職給付債務の増加部分又は減少部分をいう。退職金規程等の改定に伴い退職給付水準が変更された結果生じる。過去勤務債務は平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用(又は利益)として計上する。

【数理計算上の差異】
 年金資産の期待運用収益と実際の運用差益との差異、また平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用(又は利益)として計上する。

【平均残存勤務期間】
 在籍する従業員が貸借対照表日から退職するまでの平均残務期間であり、その算定には、退職率と死亡率を加味した年金数理計算上の脱退残存表を用いて算定する方法を原則とするが、実務上は標準的な退職年齢から貸借対照表現在の平均年齢を控除して算定する方法も認められる。


これまで退職給付引当金を計上していない会社が適用した場合の費用処理方法としては、新たな会計処理の採用により生じる影響額(適用時差異)を通常の会計処理とは区分して10年又は平均残存勤務年数のいずれか短い年数で定額法で償却する。
C:退職給付
費用
勤務費用と利息費用を合計したものから年金資産の予想運用収益を控除した額を損益計算書上に退職給付費として計上する(販売費及び一般管理費)。なお、適用時差異及び未認識債務が発生した場合はそれぞれの償却額も計上する。

退職給付制度費用
=@勤務費用+A利息費用−B期待運用収益額+C過去勤務債務費用処理額±D数理計算上の差異費用処理額+E会計基準変更時差異の費用処理額

@【勤務費用】
 当事業年度の労働の対価として発生したと認められる退職給付、退職給付見込み額のうち当期に発生したと認められる額を割引計算で算出。

A【利息費用】
 割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息。期首の退職給付債務に割引率を剰じて計算。

B【期待運用収益額】
 年金資産の運用により期待される運用収益の額。期首の年金資産の額について期待運用収益率を乗じて計算。

C【過去勤務債務費用処理額】
 退職金規定を変更した場合など退職給付水準が変更された結果、改定前と改定後で退職給付債務に差異が生じる。これを「過去勤務債務」という。各期の発生額について定額法(平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期償却する方法)により償却し、退職給付費用として加減算する。

D【数理計算上の差異費用処理額】
 年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値との実際の差異。定額法で償却する。

E【会計基準変更時差異の費用処理額】
 新会計基準への切替時に発生した債務のうち、当期の費用として処理する額。

D:原則法
 イメージ
 図
@原則法

2.<簡便法>
A:退職給付
  債務

退職一時金の場合は「期末自己都合要支給額」を退職給付債務として認識する。確定給付型の企業年金の場合でも、支給実績として従業員が退職時に退職一時金を選択することが多い場合は「期首自己都合要支給額」を退職給付債務として認識することが認められる。

自己都合⇔会社都合
※定年は会社都合
B:退職給付
  引当金


■激変緩和
 措置

退職給付債務(期末要支給額)を計上する。年金資産がある場合は年金資産を控除する。なお、適用時差異の未償却分がある場合は退職給付引当金計上時に差引く。

これまで退職給付引当金を計上していない会社が適用した場合の費用処理方法としては、新たな会計処理の採用により生じる影響額(適用時差異)を通常の会計処理とは区分して10年又は平均残存勤務年数のいずれか短い年数で定額法で償却する。

C:退職給付
  費用

期首の退職給付引当金残高から退職一時金給付額及び企業年金制度への拠出金を控除した残額と期末の退職給付引当金との差額を損益計算書上に退職給付費用として計上する。

D:原則法
 イメージ
 図
A簡便的方法

 
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