2006/5/18 掲載
 前回号では「退職給付引当金」を解説しながら「退職給付債務の考え方」、「原則法」と「簡便法」のポイントを解説致しました。
 今回は「退職金制度 企業年金と一時金制度」と「退職金規程」についてお伝えしてまいります。
 解説は前回号に引き続きグローバルハートが2005年9月に開催いたしました「中小企業会計と退職給付引当金セミナー」の資料を使用し解説させていただきます。
退職金制度 企業年金と一時金制度
【企業年金制度−現状認識 1.わが国の退職給付制度と法制】
■企業年金法=確定給付企業年金法(2002年4月1日施行)
  確定給付型の企業年金制度における 受給権の保護を主な狙いとして、必要な制度の整備を行うためにつくられた法律
 
■受給権の保護
  退職して年金を受給しているものだけでなく、在職中であっても退職すれば受給できる資格を有する者が潜在的に獲得している給付を受け取る権利で、企業倒産などの不測の事態が生じても年金等の給付を受け取る権利を保護することを目的とする。
 
■企業年金法の概要
 
  1. 趣旨
    今後の本格的な高齢社会の到来を控え、公的年金を土台としつつ受給権保護を図る観点から労使の自主性を尊重統一的な枠組みの下に必要な制度整備を行う。
  2. 概要
  1. 確定給付型の企業年金について、積立基準受託者責任情報開示等統一的な基準を定め、これを満たすものについて承認を行いあわせて税制措置の整備を行う。
  2. 厚生年金については、厚生年金の代行を行わない他の企業年金制度への移行を認める規制緩和)。
  3. 新規の適格退職年金契約は認めず、既存のものは一定の十分な経過期間(10年間)を設け、他の企業年金制度へ移行する。
 
【企業年金制度−現状認識 2.新会計基準のあらまし】
■統一的な会計処理
  退職一時金・企業年金について同一の数理的な方法で債務・費用を計算します。
 

【企業年金制度−現状認識 3.適格退職年金】

企業が従業員に支払う退職金を、合理的計算(年金数理)に基づいて事前に積み立てておき、退職者が発生した時に、積み立てられた財源から年金又は一時金を支払うしくみとなっている。

■しくみの概要(標準者の場合の概念図)
過去の勤務期間を通算する場合や、定年退職はもちろん、中途退職、死亡退職の場合も含めて、企業の退職金制度に合わせた設計を行うことが可能。
■年金数理に使用する計算前提(基礎率)
−従業員100名以上の契約(実績脱退率使用契約)の場合−
【利率】 国債の金利水準の動向を勘案して大蔵省令に規定する。
基準利率*以上 〈H12年度は1.7%(毎年改定)〉
*具体的には、10年国債応募者利回りの過去1年(1〜12月)の平均を参考に算出。
【退職率・脱退率】 当該企業の実績値使用
【死亡率】 第15回生命表の死亡率(男子)の85%等
【昇給率】 当該企業の実績値使用
 
■制度加入時からの平準的な積立だけでよいのか・・・
  多くの制度において、加入者がある特定の年齢で制度に加入したものと仮定して、その年齢の保険料(正常保険料)を実際の制度加入日から適用する方式を採用している。*

この場合、左記の標準者の概念図のように、制度加入時から平準化した正常保険料による積立てだけでまかなえるのは「制度加入時=特定年齢」に該当する加入者のみであり、それ以外の加入者については、特定年齢から制度加入日までの期間に相当する保険料積立が未済であるため、不足が発生する。

このような不足を過去勤務債務等、又はPSL(Past Service Liability)と呼び、過去勤務債務等を償却するための保険料を過去勤務債務等(PSL)保険料と言う。
 
* ある特定の年齢(例えば18歳)で全員が加入したとみなす方式であり、加入年齢方式と言う。
100名以上加入の契約(EDP契約)ではほとんどがこの方式。また、100名未満加入の契約(レート契約)で加入年齢方式を採用する場合には、通常加入年齢を各加入者ごとに設定する。
 
退職金制度 企業年金と一時金制度
 
退職金制度 3.退職金規定(抜粋例)
退職金規定(抜粋例)
 
第○条 (適用範囲)
   この規定の適用を受ける社員は就業規則第○条に定める正社員とし、嘱託社員、パート社員には適用しない。
 
第○条 (退職金の支給)
   会社は勤続満3年以上の社員が退職したときには、本規定の定めるところにより退職金を支給する。
 
第○条 (退職金支給基準額)
   退職金の支給基準額は、退職時の基本給に別表の支給率を乗じた金額とする。
 
第○条 (退職金)
   次の事由により退職する場合は支給基準額の100%を支給する。
 @定年による退職
 A会社都合による退職
 B在職中の死亡による退職
 C勤続20年以上の自己都合による退職
2.第1項以外の事由により退職する場合は、支給基準額の80%を支給する。
 
第○条 (功労加算)
   前条第1項の事由に該当し、在職中特に功労があった場合には、10%以内の加算を行うことがある。
 
第○条 (退職年金規定との関係)
   本規定の退職金については、その一部を別に定める退職年金規定に基づき支給する。
 
退職金制度 4.退職念金規定(抜粋例)
第1章  総 則
 
第○条 (適用範囲)
   この制度は、次の各号に掲げる者を除き、すべての社員に適用する。
 (1)役員
 (2)日々雇い入れられる者
 (3)臨時に期間を定めて雇い入れられる者
 (4)嘱託社員、パート社員、臨時社員
 
第○条 (加入資格)
   この制度への加入資格は、入社した日に取得する。
 
第○条 (加入時期)
   前条によりこの制度への加入資格を取得した者は、加入資格を取得した日以降最初に到来する○月1日にこの制度へ加入する。
 
第○条 (脱退)
   加入者が次の各号のいづれかに該当するときは、この制度から脱退する。
 (1)退職したとき(役員に就任したときを含む。以下同じ)
 (2)死亡したとき
 
第○条 (基準給与)
   掛金および給付の基準となる給与は、給与規定に定める基本給とする。
 
第2章  給 付
 
第1節  退職年金
 
第○条 (支給事由)
   加入者が次に掲げる事由に該当したときは、その者に退職年金を支給する。
   勤続満20年以上で定年退職したとき
 
第○条 (金額)
   退職年金の月額は、次に定める額とする。
   退職時基準給与に勤続年数に応じて別表1に定める率を乗じた額
 
第○条 (支給期間)
   退職年金は、脱退した月の翌月から10年間支給する。
 
第2節  退職一時金
 
第○条 (支給事由)
   加入者が次に掲げる事由に該当したときは、その者に退職一時金を支給する。
   勤続満3年以上20年未満で定年退職したとき
 
第○条 (金額)
   退職一時金の額は、次に定める額とする。
   退職時基準給与に勤続年数に応じて別表2に定める率を乗じた額
 
第3節  遺族一時金
 
第○条 (支給事由)
   加入者であった者が次に掲げる事由に該当したときは、その遺族に遺族一時金を支給する。
   退職年金を受給している者が支給開始後10年未満で死亡したとき
 
第○条 (金額)
   遺族一時金の額は、次に定める額とする。
   退職年金の月額に、すでに受給した期間に応じて別表3に定める率を乗じた額
 
第4節  給付細則
 
第○条 (年金の一時払)
   退職年金の受給者が、次の各号のいづれかの事由によって、年金の一時払を必要とするときは、会社の承認をえて、年金に代えて一時金(以下 選択一時金という。)を選択することができる。
 (1)災害   〜(6)債務の弁済
 (7)その他前各号に準ずる事実
2.選択一時金の額は、次に定める額とする。
      退職年金の月額に、すでに受給した期間に応じて別表3に定める率を乗じた額
 
 
 
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