2007/1/18 掲載
『知って得するシリーズ』では、日本版401kや企業年金等に関する知っておいた方が良い情報をお届けしております。
シリーズ第6回では社会保険労務士の西田さんが、本年4月より実施されます「離婚時の年金分割」についてお伝えしてまいります。
 
 
平成16年の年金法改正により「離婚時の年金分割」が平成19年4月から実施されます。
これに先立ち昨年10月から社会保険庁で年金分割額を通知することができるようになりました。
スタートから一ヶ月で6000件を超える問い合わせを受け、その8割が主に分割された年金を受ける側の女性からだったことが報道されました。毎年増加傾向であった離婚件数がここ3年ほど続けて減っていることなどとあわせると、今年の年金分割制度に関心をよせる人が多くいることを感じとることができます。

しかしこの「離婚時の年金分割」を《平成19年4月まで離婚を待てば、それまでの婚姻期間を含めて本来夫がもらうはずの年金の半分を自動的に妻がもらうことができる制度》などと受けとられている方も多いと聞きます。
「離婚時の年金分割」は平成19年4月より実施されるものと、平成20年4月より実施されるものがあるためこのような誤解が生じているのでしょう。
そこで、今回と次回の2回に渡り「離婚時の年金分割」とはどんな内容なのかについて考えていこうと思います。
なお説明の簡素化のため、年金の分割は夫の側から妻の側に対して行なわれることとさせていただきます。
 
 
今回の年金分割制度導入の背景
 
社会保険庁のホームページを拝見しますと今回の制度を導入した背景として、近年の中高齢夫婦の離婚件数が増加している中で、それまでの男女の働き方の違いにより離婚後の夫婦の年金受給額に大きな開きがあることを問題点とし、平成16年の年金制度改正により離婚時の厚生年金分割制度が導入されたとしています。

たしかにこれまでの国の年金制度の考え方は夫婦2人をひとつの世帯単位とし、会社員の夫と専業主婦の妻を基本の組み合わせにして、老後2人でいくらの年金を受給できるのかを提示してきました。
妻の側には基礎年金の受給しかなくても夫の受取る厚生年金と合わせることにより夫婦合わせた年金収入ととらえさせていました。しかしいざ離婚となると専業主婦だった妻の場合は自分の基礎年金とせいぜい独身時に勤めていた期間の厚生年金ぐらいしかありません。
 
図1
 
また離婚後の財産分与として夫の年金の一定額を妻へ分与することになったとしても年金の受給権はあくまでも夫側にあり、その元夫が亡くなれば年金は途絶えることになります。
今回の年金分割制度が導入されることで、引き渡された年金は元妻のものとなりますので、元夫が亡くなったとしてもこの年金を失うことはなくなります。
 
日本の公的年金制度の仕組み
 
「離婚時の年金分割」の内容を理解してもらうにはまず日本の公的年金制度の仕組みを振り返ってもらう必要があります。
日本の公的年金制度をよく建物に例えて、1階の部分である国民年金(基礎年金)に、サラリーマン等の勤め人が加入する厚生年金(公務員等は共済年金)が2階部分として乗り、さらに事業所ごとに企業年金などの3階部分が上乗せされているといった下記の図をみたことがあると思います。
 
図2
 
今回のテーマである年金の分割はこの図のうちの網掛けしている部分が対象であり、もちろん網掛け部分であっても2人が夫婦となる前の独身時代の期間は対象になりません。
また分割対象となる婚姻期間の考え方の中には、戸籍上は夫婦でなくとも事実上の婚姻関係があり国民年金第3号被保険者と認定されていた期間も含まれます。

国民年金の加入種別はここでは重要な意味を成します。
20歳以上60歳未満で国内に居住している人は全員国民年金の加入義務がありますが、そのうち自営業者や学生などは「第1号被保険者」となります。
会社員や公務員などは「第2号被保険者」、その第2号被保険者に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」として国民年金に加入しています。
 
平成19年4月から実施される離婚時の厚生年金の分割
 
*(以後、説明の都合により分割対象となる共済年金も厚生年金に含めます)

いままで「年金の分割」としてきましたが実際に分割するのは年金額そのものではなく、夫婦の婚姻期間中の厚生年金保険料納付記録を、離婚時に当事者双方の合意または裁判手続きで定めた割合で分割することが認められます。(平成19年4月以降に成立した離婚でなければいけませんが、それより前の婚姻期間も含みます。)

保険料納付記録とは毎月の給料や賞与の額をベースにして厚生年金保険料を算出する際に使う「標準報酬」であり、夫婦の婚姻期間中の標準報酬の総合計額を分割することになります。
そのため夫側の厚生年金だけでなく妻側にも婚姻期間中に厚生年金加入期間があればそれは分割の対象となります。
ただし分割により増額する妻側の分割後の持分割合の上限は50%であり、分割される前の自分の標準報酬総額が下限となります。
つまり夫婦の合意あるいは裁判所の決定があれば、必ずしも年金を半分に分割しなくてもよいということになります。

分割の手続き期限は離婚成立後原則2年以内です。ただし裁判による分割割合の決定が長引いた等の場合には例外措置があります。
 
平成20年4月から実施される離婚時の第3号被保険者期間についての厚生年金の分割
(いわゆる3号分割)
 
平成19年の離婚分割の場合は夫婦いずれもが厚生年金被保険者であるケース、あるいは妻側が国民年金の第1号被保険者や第3号被保険者であっても分割対象期間に含まれましたが、今回の制度では平成20年4月以降の国民年金第3号被保険者期間を対象とし、その期間の相手の厚生年金を双方の合意がなくとも一方の請求により自動的に半分に分割することができる制度です。
分割の手続きのための期限はなく、平成20年4月以降の離婚成立であればいつでも請求できます。
注意する点として平成20年4月以降の離婚成立の場合、それ以前の婚姻期間があり当事者双方の合意または裁判所の決定で年金分割の割合を定めて請求すれば、「3号分割」の請求も同時にあったものとして、平成20年4月以後の期間をまず「3号分割」の方法で分割しそれ以外の期間は平成19年施行の離婚分割で行います。
二つの年金分割を表にまとめると次のようになります。
 
表1
  平成19年4月施行の年金分割 平成20年4月施行の年金分割
施行日 平成19年4月以降の離婚 平成20年4月以降の離婚
対象となる期間 平成19年4月前を含む婚姻期間 平成20年4月以降の第3号被保険者期間
分割割合 対象の期間となる婚姻期間の夫婦の
標準報酬総合計額の2分の1を上限
対象となる期間の夫の標準報酬の2分の1
合意は 按分割合について合意必要 合意は不要、請求があれば強制的に分割
障害等の制限 なし 夫が障害厚生年金の受給権者であれば
原則として分割請求できない
分割手続き期限 原則2年以内 離婚後いつでも
 
冒頭でお話した離婚分割の内容に対する誤解は、この2つの分割方法を併せて理解してしまったことのようです。
次回は「年金の離婚分割」による分割額のシミュレーションや、「年金の離婚分割」をした場合の留意点などを中心にお伝えをしたいと思います。
 
 

*今回掲載の資料は以下の資料等を基に抜粋・編集・制作しております。

  • 社会保険庁:離婚時の厚生年金の分割制度について

この資料に関するご質問は下記までお願い致します。
 株式会社グローバルハート  gheart@fine.ocn.ne.jp

 
 
<< 前回の記事を読む 次号の記事を読む >>