2007/3/15 掲載
シリーズ第7回では引き続き「離婚時の年金分割について」をお伝えします。
「年金の離婚分割」による分割額のシミュレーションや、「年金の離婚分割」をした場合の留意点などを中心にお伝えしたいと思います。

社会保険労務士の西田です。前回は平成19年4月より実施されます「離婚時の年金分割」の内容についてその概略をご案内させていただきました。
今回はそのPart.2として「年金を分割した場合の目安となる年金額はどのくらいになるのか」また、「この年金分割を行なった場合の留意点」や「分割請求のための情報提供」について述べていきたいと思います。
 
 
平成16年の年金法改正により「離婚時の年金分割」が平成19年4月から実施されます。
これに先立ち昨年10月から社会保険庁で年金分割額を通知することができるようになりました。
スタートから一ヶ月で6000件を超える問い合わせを受け、その8割が主に分割された年金を受ける側の女性からだったことが報道されました。毎年増加傾向であった離婚件数がここ3年ほど続けて減っていることなどとあわせると、今年の年金分割制度に関心をよせる人が多くいることを感じとることができます。

しかしこの「離婚時の年金分割」を《平成19年4月まで離婚を待てば、それまでの婚姻期間を含めて本来夫がもらうはずの年金の半分を自動的に妻がもらうことができる制度》などと受けとられている方も多いと聞きます。
「離婚時の年金分割」は平成19年4月より実施されるものと、平成20年4月より実施されるものがあるためこのような誤解が生じているのでしょう。
そこで、前回と今回の2回に渡り「離婚時の年金分割」とはどんな内容なのかについて考えていこうと思います。
なお説明の簡素化のため、年金の分割は夫の側から妻の側に対して行なわれることとさせていただきます。
 
 
離婚時の年金分割対象期間
 
前回と同様に年金の分割は夫の側から妻の側に対して行なわれることと仮定した場合、妻側がより多くの年金を分割して手に入れる(夫側から見れば年金を多く取られてしまうことになりますが)パターンとしては、
  • 夫は結婚した当初よりサラリーマンで、転職などをしたとしても離婚するまで途切れることなく厚生年金加入者であること。
  • 妻は婚姻期間中ずっと専業主婦であり、離婚するまで厚生年金に加入していないこと。
  • 合意が必要な対象期間についての分割割合は、最大限度の50%とする。
などが考えられます。

前回の復習ともなりますが、年金の分割対象は婚姻期間中の夫婦の厚生年金加入期間中です。
結婚前の厚生年金加入期間中や国民年金(基礎年金)は分割できないことになっています。
 
図1
 
年金分割により妻が受取る年金額
 
妻が多くの年金分割を受ける先ほどのパターンで具体的な事例のもと年金額を試算してみます。
試算のための前提は下記のとおりとします。
  • 夫婦は同い年で、社内恋愛の末25歳で結婚。妻は結婚を機に退職して専業主婦となる。
  • 夫は同じ会社に勤務し60歳で退職する予定。この間の平均報酬額は35万円とする。
  • 妻は夫の退職を待って離婚したいと考えている。
 
その際の妻が分割して受取ることのできる最大の年金額の大まかな目安は・・・
(年金額は平均報酬額に旧乗率7.5/1000のみ反映して算出します。)

夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)は1,029,000円
妻が50%の割合で分割し受取るとすると妻へ分割される年金額は1,029,000円/2=514,500円
年金月額で43,000円弱程度です。

妻が婚姻期間中にお勤めをして厚生年金の加入者であったなら、その間の妻の報酬額と夫の報酬額を合算のうえ分割されますので、さらに夫から分割される年金額は減ることになります。
また妻が40年間国民年金に加入し続けた場合でも老齢基礎年金と合わせた年金は月額11万円程度となります。

それではこの夫婦が離婚せずに65歳以後受取ることのできる二人合わせた老齢年金はどれぐらいになるでしょう。
仮に二人とも40年間国民年金にも加入し続けることができれば月額23万円強ほどになり、老後の二人の生活を支えるための重要な収入源を成すことができます。
しかし二人が離婚をしてそれぞれが別世帯で暮らしていくには月額11万円ほどの収入では生活をすることが困難なようです。

また、単身者になることで夫の老齢厚生年金に付くはずだった加給年金(家族手当のような意味合いの付加年金)や妻が65歳以後それまでの加給年金の替わりに自分の年金に付帯される振替加算も失うこととなります。
 
妻が離婚時の年金分割で受取った夫からの厚生年金加入期間は「みなし被保険者期間」
 
妻自身の厚生年金加入期間が1年未満であったり、まったくない場合には老齢基礎年金が受給できる時まで夫からの老齢厚生年金を受取ることはできません。
夫から分割した年金加入期間は、妻自身の老齢年金を受給するための資格期間として加算することができない「みなし期間」であるためです。
そのため夫と離婚後に国民年金の種別変更手続きを怠り、受給資格年数を満たせないとせっかく得た夫からの分割分の年金も含め自身の年金受給ができなくなることもありえます。
 
年金分割に対する当事者への情報提供
 
年金の仕組みや年金額の計算などは非常に難解で複雑なため、離婚による年金分割に関する情報提供を昨年より社会保険庁で行なっています。

提供される情報は、
  • 分割の対象となる期間
  • 分割対象期間の当事者の標準報酬総額
  • 分割するための按分割合の範囲
  • その他請求を行うための必要な情報
などです。

情報は離婚する前から請求することができ、その場合、離婚当事者の一方からの請求でその請求をした本人にのみ情報を提供することができ、離婚後は当事者双方に提供を行ないます。
 
 
最後になりますが、夫婦の離婚の問題は個々のケースにより様々ですので、年金が分割されるかどうかだけで決められるものではないでしょうが、判断材料のひとつになることは考えられます。

それだけに離婚後の「生活費がいくらかかるのか」「貯えはあるのか」「収入を得るための仕事は確保できるのか」など、暮らしの中で経済的に問題がないことかどうか、年金分割の内容についてよく理解していただくだけでなく年金プラスアルファの生活設計に関する知識もしっかりと身に付ける必要がありそうです。
 
 
次回号の『知って得する』シリーズ【第8回】では「日本版401k運用体験記」をお伝えする予定です。日本版401kの導入5年目を迎えた体験者の方たちの実体験を座談会形式でお伝えしたいと思います。お楽しみに!
 
 
*今回掲載の資料は以下の資料等を基に抜粋・編集・制作しております。
  • 社会保険庁:離婚時の厚生年金の分割制度について

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