2007/7/19 掲載
このシリーズ「ドキュメント企業年金−日本版401k」では企業年金にまつわる課題を検討し、企業と加入者の方のためのより良い制度の運営に貢献できますよう様々な角度から情報を提供 させて頂いております。
「企業の果たす役割−加入者向け運用アドバイスの方法」として加入者向けアドバイスの方法 の詳細をお伝えして参りましたこのシリーズも今号で最終回となります。
シリーズ最終回では「投資教育の注意点とポイント」をお伝え致します。
 
投資教育の内容 8.投資教育の注意点とポイント
 
厚生労働省の発表によれば、確定拠出年金(日本版401k)企業型の承認規約数は2,357件、実施事業主数は8,862社、加入者数は約2,424千人(平成19年4月末:速報値)となっており、確定拠出年金(日本版401k)を導入する企業は年々増加しています。
増加した背景には適格退職年金の廃止等も理由として挙げられますが、将来の年金への不安から国任せではなく、個人が自己責任で運用し老後に備えるようとする風潮が、日本においても少しずつ定着してきたとも考えられるのではないでしょうか。

シリーズ最終回では、企業年金連合会の「確定拠出年金に関する実態調査」(2006年8月調査;1898規約対象)から、確定拠出年金導入企業の投資教育・継続教育実態を検証し、投資教育の注意点とポイントについて考えていきたいと思います。
 
●事業主に対する投資教育の義務について
確定拠出年金の投資教育・継続教育については、確定拠出年金法において努力義務が定められています。現在の段階では努力義務ですが、今後事業主の義務化も検討されていく方向にあるようです。

厚生労働省年金局が「確定拠出年金法並びにこれに基づく政令及び省令について(法令解釈)」(いわゆる投資教育ガイドライン)よりまとめた資料によれば、以下の事項が投資教育を実施する場合の必須事項・配慮事項となります。
 
<投資教育を実施する場合の必須事項>
  • 加入時・加入後の投資教育の計画的実施
  • 継続教育における制度実態(加入者のニーズ等)の把握の必要性
  • 継続教育における基本的な事項の再教育の必要性
  • 投資教育の委託した場合の実態把握の必要性
<投資教育を実施する場合の配慮事項>
  • 投資教育後のアンケート調査等による達成状況の把握
  • 継続教育における加入者の知識、経験に応じたメニューの多様化
  • 継続教育における、個別の質問等への対応
  • できる限り多くの加入者に対する投資教育の利用機会の確保
 
<確定拠出年金法>(抜粋)
(目的)
第一条
 この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

(事業主の責務)
第二十二条
 事業主は、その実施する企業型年金の企業型年金加入者等に対し、これらの者が行う第二十五条第一項の運用の指図に資するため、資産の運用に関する基礎的な資料の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
 

●投資教育・継続教育の実態

1.投資教育・継続教育の実施状況

確定拠出年金では、加入者が自己責任において運用を行う為、事業主の加入者に対する投資教育が義務化されていますが(努力義務) 、事業主にとってはその義務を果たすことは必ずしも容易なこととはいえないようです。
【図1-1】を見ていただくと分かるように、投資教育、特に継続教育の実施状況は企業間でかなりの格差があるようです。

【図1-1】
 
【図1-2】
 

2.投資教育(DC)に対する社内体制

社内体制については、【図2-1】を見ていただいても分かるように、「DC専門の担当者が社内にいる」「独立した事務局・部課がある」という企業は5%程と少ない割合となっています。ほとんどの企業において、DC担当者は他業務と兼務しているようです。
また、【図2-2】を見ると、投資教育は運営管理機関主導で行われているのが実態のようです。担当者が他の主要な業務と兼務では、担当者だけで業務を行うのは限界があるといえるでしょう。
投資教育・継続教育は運営管理機関、労使や外部投資教育会社等と蜜に連携を持ちながら対応していくことが大切です。

 
【図2-1】
 
【図2-2】
 

3.加入者動向(運用状態について)

日本でDC(確定拠出年金)が導入された当初からつい最近までは、「元本確保型」の商品を選択する加入者の割合が高かったのですが、現在では投資性の高い商品に少しずつシフトしつつあり、投資信託等の運用を選択する傾向が徐々に高まってきているようです。
まだ少数ではありますが積極的運用商品を選択する加入者も出てきており、元本確保派と投資信託派の二極化に少数グループの積極運用派という構図になりつつあるようです。

 
【図3-1】
 

4.投資教育の実施方法

【図4-1】のグラフを見ると、導入時教育・継続教育にかかわらず、集合研修が最も実施されている方法だと言うことがわかります。企業にとっては「実施しやすい」、従業員にとっては「参加しやすい」方法だということは確かですが、下記のグラフを見ると一方向からの教育方法の実施率が高いことが気になります。双方向的な研修を心がけ、質問しやすい、わかりやすい方法を選択肢に入れることが大切です。

【図4-1】
 

日本版401kの導入初期の頃、弊社が投資教育を請け負った際、従業員の方から「制度の基本を理解することが難しい」、「理解不足のためスイッチングしていない」等の声が聞かれました。

現在でも制度等の基本については、導入時の研修のみで済ませてしまい継続教育が運用へと進んでから「制度について分からない」と立ち止まってしまうケースも多く見られるようです。

そうならない為にも、年金制度、自社の退職給付制度、そしてライフプラン・リタイアメントプランについて導入時にきちんと情報を提供し、理解を深めてもらうことが重要だと言えます。

また、確定拠出年金(日本版401k)は、老後の所得確保が前提ですので、その前提を踏まえた上で長期的な視野で運用を進めてもらうことが大切です。

以上1から4まで「投資教育の実態」を見てきました。それを踏まえて投資教育の注意点・ポイントを以下にまとめてみました。

<投資教育における注意点・ポイント>
  • 基本的な年金制度・確定拠出年金制度についての理解度を高める。
  • 制度導入時はもちろん、継続教育の中でも制度の基本教育を繰り返し行う。
  • 就業時間内で定期的に継続した教育を行う。
  • 加入者の理解レベルを把握し、レベルごとに研修等が受けられるようにする。
  • フォロー体制をつくり加入者間の情報格差を広げない。
  • 加入者の声を聞く姿勢を伝え、利用しやすい環境を整える。
  • 加入者の情報ニーズを把握、ニーズにあった情報の収集・発信に努める。
  • リスクをきちんと伝え、正しい投資情報を伝える。また長期的視野で運用を行うことを促す。
  • 資料については、イラストや図を使用しわかりやすい資料を使用する。
  • ビデオ(DVD)・WEB等を使用し、使用環境を広げる。PC等を使用の際には、不慣れな利用者の為にわかりやすいマニュアルを用意する。
  • 対“人”ということを常に念頭に置き、きめ細やかな対応を心がける。
 

より良い投資教育・継続教育を行うには時間と労力がかかります。事業主と担当部署だけでは限界がありますので、労使や運営管理機関、外部の投資教育機関と蜜に連携を取り進めていくことが大切です。

確定拠出年金は制度としては、まだ発展途上であり、今後の改正により掛金拠出やポータビリティ等が改善されることになれば、加入者・事業主、両者にとってより使いやすい制度へと変ってくるでしょう。
導入企業が増加するに従い、福利厚生と共にポータビリティ性の高い確定拠出年金が優秀な人材確保に欠かせないポイントとなる日もそう遠くはないかもしれません。

一部マスコミでは「投資教育の実施報告が義務付けられるのでは」という報道もされたようですが、文頭でも述べたように国・厚生労働省の見解では、投資教育・継続教育については義務化の方向へ進むことが想定されます。
今後は事業主の積極性が強く求められてくるでしょう。
運営管理機関や外部の教育機関と連携し、より良い制度へと高めていくことは自社発展への近道となるかもしれません。

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今号を持ちまして「ドキュメント企業年金−日本版401k」シリーズは最終回です。次号からは新シリーズを検討中です。お楽しみに!
 
 

*今回掲載の資料は以下の資料を参考に潟Oローバルハートが作成しております。
資料につきましてのご質問は下記までお願い致します。


 株式会社グローバルハート  gheart@fine.ocn.ne.jp

参考資料;企業年金連合会「確定拠出年金に関する実態調査」(2006年8月調査;1898規約対象)
 
 
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