2007/9/20 掲載
シリーズ第10回では『「日本の社会保障制度について」−給与明細からみた日本の社会保障制度−』をお送りします。この6月から所得税額が大幅アップになり、給与明細を見て驚かれた方も多いと思います。分かりにくいとされている社会保障制度について税率等の変更も含め給与明細を見ながら解説していきたいと思います。
 
【日本の社会保障制度について】
 
今回は私たちに身近な「給与明細」を見ながら「社会保障制度」の概要を考えてみたいと思います。社会保障制度の概要等については厚生労働省発表の資料から解説してまいります。
 
1.社会保障制度の全体像
 
 私達の生活を支える国の制度を「社会保障制度」と言います。職種や年齢などにより異なりますが、私達は社会保険料を支払い、ある一定の条件を備えたときに給付を受けます。自分はどの制度の加入者なのか、どのように関ってくるのかを理解しましょう。
 下記の給与明細例のように一般的なサラリーマンの方々は毎月の給与から税金や社会保険料を支払っています。支払い方は職種や年齢、立場により異なりますが、代表的な事例として検証してみます。
 
【図1】
 
 
2.社会保険料の支払い
 
 健康保険料(40歳以上64歳までの場合は介護保険料含む)、厚生年金保険料雇用保険料は毎月の給与から控除されます。労災保険は事業主が全額負担していますので控除されません。
 健康保険料
(40歳以上64歳までの場合は介護保険料含む)と厚生年金保険料は、勤めている方の給与をもとに標準報酬月額※1)を決定し、これに各保険料率を乗じて計算されます。そして計算された保険料を事業主と被保険者で折半負担した金額が控除欄に記入されます。
 雇用保険料は毎月の給与に雇用保険率を乗じた金額を事業主と被保険者で各負担率に応じて負担します。被保険者負担金額が控除欄に記入されます。
 
【図2】Aさんの給与明細:例

クリックすると拡大表示します。
 
一般的なサラリーマン:Aさんの場合(仮定)年齢36歳
毎月の給与に対する源泉徴収
@平成18年6月分の給料(基本給、各種手当て):306,000円
A給料から天引きする社会保険料等(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等):38,025円
B扶養家族等の数:妻及び子供2人
 
※1 標準報酬月額:毎月の保険料や手当金などの計算にあたって、被保険者の給与をもとに決めるのが実態にあった方法ですが、給与は毎月変わりますので、被保険者の受取る給与に基づいて区切りのよい幅で区分されている報酬月額を定め、これを使用します。この報酬月額のことを標準報酬月額といいます。
 
3.所得税と住民税について
 
 【図3】のようにサラリーマンの方々は毎月の給与から、国に収めるお金が引かれますが、その額と同じ位の金額を会社が国に納めています(【図3】の保険料率等は例です。
 ちなみに所得税、つまり毎月の給与やボーナスから源泉徴収される所得税額は社会保険料等控除後の給与等の金額を段階ごとに分けた「給与所得の源泉徴収税額表」により求められます。計算方法の概要は【図4】を参照下さい。
 年末に一度控除される「生命保険料控除」「配偶者特別控除」等や、「扶養親族の数の変更」などの理由から、1年間の給与総額に対する所得税額と毎月の給与から源泉徴収された所得税の合計額は、必ずしも一致しません。そのため、その年の最後の給与支払い時に過不足額の精算が行われます。これを年末調整といいます。
 また、住民税とは居住する自治体が課す税金のことで地方税の一種です。住民税は居住する自治体により計算方法が若干異なりますので、詳細は各自治体にお問合せ下さい(Aさんの例では便宜上10,000円としています)。

※2:所得税・住民税の税率変更等については下記の「税率等の変更についての注記」を参照。
 
【図3】
【図4】
 
税率等の変更についての注記
 
「国から地方への税源移譲」により、平成19年より所得税率と個人住民税の税率が変更されました。基本的に所得税は減り、その分個人住民税(所得割)が増えることになりますが、税源の移し変えのため所得税と住民税の合計金額は基本的に変りません。しかし、19年より定率減税が廃止されるため、結果的に税負担は増えることになります。

ちなみに国民健康保険料は、各市町村ごとに、毎年の医療費の動向や加入者の所得状況などによって決定され、年度ごと、また世帯ごとに保険料が違います。住民税の税制改正により保険料額が影響される場合もあります。
詳しくは国税庁、または各地方自治体にお問合せ下さい。

【平成19年の税率変更】

●住民税(平成19年6月から):3段階の税率から、一律10%に変更
●所得税(平成19年1月から):4段階の税率から、6段階に細分化

【定率減税の見直し】
●所 得 税:(改正前)税額の10%相当額を控除(上限12.5万円)
       →(改正後)平成19年1月分から廃止
●個人住民税:(改正前)税額の7.5%相当額を控除(上限2万円)
       →(改正後)平成19年6月分から廃止
(※上記の改正前の控除割合は18年度分。11年から17年度の控除額は18年度の2倍の控除額だった。)

■厚生年金保険料のアップ
サラリーマンが加入する厚生年金の保険料は、「標準報酬月額」に保険料率を乗じて算出します。保険料率は、平成16年10月から毎年2017年まで、毎年0.354%ずつ引き上げられ平成29年10月以降は18.3%で固定されます。平成19年5月現在(平成18年9月〜平成19年8月)は14.642%です。収入×保険料率が保険料で、これを会社と従業員が折半して負担します。
 
4.年金制度の仕組み
 
 【図5】のように、わが国の年金制度は国が運営する公的年金と、国以外の機関が運営する私的年金があります。
 公的年金は、20歳以上60歳未満の全ての国民が加入しなければならない国民年金(基礎年金)と企業の従業員が加入する厚生年金、公務員と私学の教職員が加入する共済年金があります。
 私的年金には、企業が運営する企業年金があり、さらに個人が個々に老後に備え加入する個人年金があります。
 
【図5】

クリックすると拡大表示します。
 
【図6】
 
 

〔まとめ〕
毎月もらっている給与明細をじっくりとご覧になって理解している方は意外に少ないと思います。
毎月天引きされている社会保険料の額をよくご覧になってみると、その額に驚かれるかもしれません。
特にこの6月より「国から地方への税源移譲」により、平成19年より所得税率と個人住民税の税率が変更となりました。住民税が上がった分、所得税は下がったので実質同じであると政府は説明していますが、定率減税が廃止されたことによって実質増税となっています。
今回のメールマガジンで日本の社会保障制度の仕組みを私たちの暮らしに直結する給与明細から垣間見ていただけたら幸いです。

 
 
 

当資料で使用した図表並びに計算方法等は等は、厚生労働省、国税庁及び総務省の資料等をもとにグローバルハートが作成しています。
ご質問は下記までお願い致します。
 株式会社グローバルハート  gheart@fine.ocn.ne.jp

 
 
<< 前回の記事を読む 次号の記事を読む >>